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2005年10月 1日 (土)

ザイン、ゾレン、ヴェルデン(存在、当為、生成)

 私たちは、政治学、社会学、経済学などの世界で、長年「われわれはどうあるのか(ザインSein)」、「われわれはどうあるべきか(ゾレンSollen)」という問題設定になじんできた。これは、2軸での問題設定である。ここで、私は新たに「われわれはこれまでどうしてきたのか、そしてこれからどう進もうとしているのか(ヴェルデンWerden)」という問題設定を追加することを提案したい。つまり、3軸での問題設定である。このことによって、私たちの思考領域は大幅に拡大し、新たな知識も生まれるはずである。
 上記のような文脈の中でヴエルデンという言葉が初めて用いられたのは、私の知る限り、グスタフ・シュモラーの『国民経済、国民経済学および方法(1911年)』(田村信一訳、日本評論社、2002年)である。この第19章で、シュモラーは次のように述べている。「・・・マーシャルとともに、われわれは「存在」から「生成Werden」を学ぶべきである、と言わなければならない。つまり、研究者が過去と現在の生成を把握することが多くなるにつれて、将来と当為についてなにか言明することがますます可能になる。」
 上記のような3言語を、社会科学の世界で現在重視しているのは山脇直司『包括的社会哲学』(東京大学出版会、1993年)である。ここの第3章からも引用しておく。「・・・制度論における問いとして、1「何がどう存在するのか」、2「何がどう起こりうるのか」、3「何がどう存在すべきか」という3つの次元が考えられるとすれば・・・。」なお、前記書を読めば、山脇は上記のシュモラーにも熟知していると考えられる。
 ここで、ドイツ語のヴェルデンWerdenの意味を辞書から抜書きしておく。
    成る、起こる、生ずる、創造される、生長する、発達する、など
 このドイツ語の意味を見て、気の付いた人もいると思います。そうです。複雑系理論やカオス理論のキーワードの「創発」です。現在では、この創発の英語はemerge(動詞)、emergence(名詞)、emergent(形容詞)が使われているケースが多いようです。複雑系理論の創始者の1人であるI. プリゴシンは、この言葉としてbecome(動詞)、becoming(名詞)を用いております。参考のため、次のように対で用いられているケースとその訳を示しておきます。書名などは省略。(物理学の世界ですから、Sollenは使っておりません。)
    Being and Becoming   ・・・ 存在と生成
        From Being to Becoming  ・・・ 存在から発展へ
 私たちは、ザイン、ゾレン、ヴェルデン (存在、当為、生成)の3軸でモノを考える習慣をつけることが必要だと思います。長年慣れ親しんだザインとゾレンにヴェルデンを追加するのです。そうすれば、自然と思考の中に、新しいものの見方の複雑系理論などの成果も取り込めるのではないでしようか。

追記:確か、K. ポパーは『科学的発展の論理』の中でemergeと言う言葉を使っていたと思います。しかしそこでは、この言葉はキーワードではなかったと思います。

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