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2005年11月12日 (土)

消費者物価指数の本質

 消費者物価指数がさまざまな面で重要性を増してきている。例えば、①日本銀行の金融政策の参照指標として、②年金支払い額の考慮要因(物価上昇ならば年金増額、物価減少ならば年金減額)、③国内総生産(国内総消費)のデフレータ作成要素などである。このようにさまざまな用途に用いられている消費者物価指数に大きな問題がある。以下では、②との関連にしぼって考えてみたい。
 一言でいうならば、現在の消費者物価指数は金持ち追随型となっている。専門用語でいうならば、物価指数は民主的democraticではなくて金権的plutocraticであるという。簡単にこのことを説明しておく。
 ここでは2人の消費者(あるいは世帯)しかいないものとする。仮に、マルキン様をAとし、マルビ様をBとする。2人の月間の消費支出額はAが100万円、Bが1万円とする。
 ◎ ケース1
 「貧乏人は麦を食え」で、Bの月間の麦の支出額が5千円であり、Aのそれはゼロとする。この時、麦の小売価格のみが2倍となり、他の財の価格は変わらなかったと仮定する。マルキンAの生活は以前と変わらないであろうが、マルビBの生活は大変である。おそらく、生活破綻に近い状態となるであろう。
 この時の消費者物価指数の上昇はどうなっているであろうか。麦のウエイトは0.005弱(5千円÷(100万円+1万円))にすぎないから、物価指数は下記のように計算される(概算である)。
    2×0.005+1×0.995=1.005
 物価指数の上昇は約0.005、つまり0.5%にしかならない。
 ◎ ケース2
 極端な例としてAの牛肉の月間支出額が50万円であり、Bのそれはゼロとしてみよう。ここで、牛肉の小売価格のみが2倍となり、他の財の価格は変わらなかったとしよう。この時は、Aの生活はやや困窮するが、年金額が物価に連動していればそう大きな問題とはならない。
 この時の牛肉のウエイトは0.50弱(50万円÷(100万円+1万円))であるから、物価指数は下記のように計算される(概算である)。
    2×0.50+1×0.50=1.50
 物価指数の上昇は約0.50、つまり50%となる。
――――― ――――― ―――――
 AとBの支出額のすべてが年金額や生活保護費であって、これらが完全に消費者物価指数に連動しているものとする。
 ケース1ならば、これらの金額は0.5%程増額される。Bは50円程度増額される。この程度では、マルビBの生活は維持不能であろう。この時、Aも5千円程度増額されるが、麦は食べないので、以前と同じ生活ができ、かつ5千円の余剰が生ずることになる。
 ケース2ならば、これらの金額は50%程度増額される。マルキンA様の年金額は150万円となるから、以前と同量の牛肉を消費しても、50万円残る。つまり、Aは以前と同様の生活ができるのである。もちろん、Bの年金額も5千円程度増額されるので、以前よりも豊かな生活ができるようになる。
 上記の例から、消費者物価指数が金持ち追随型、あるいは民主的democraticではなくて金権的plutocraticであるということが分かるであろう。年金や生活保護費が消費者物価に連動していても、それは金持ち(正確には高額支出者)の生活水準を維持するように作用して、貧乏人(正確には少額支出者)の生活水準を維持することにはほとんど無関係であるといえよう。
 高齢者の年金や生活保護費に連動する場合の消費者物価指数の大きな問題点は以下の3つである。
 1つ目、これらの世帯では収入・支出格差がかなり大きいという点である。
 2つ目は、低所得・低支出の世帯・人たちほど医療費支出額が大きくなりがちであるという点である。
 3つ目は、消費者物価指数の財・サービスのウエイトは全世帯の消費が対象となるから、医療費のウエイトは、低所得・低支出の高齢世帯のそれよりも格段に小さいという点である。そして、医療費の価格上昇が今後も大きいという点である。
 上記のことを考慮すると、年金や生活保護費に連動する消費者物価指数はどのような性質を持つべきかが分かろう。低所得・低支出の高齢者も安心して生活がおくれるような消費者物価指数を作成し、それが年金や生活保護費に連動することが望まれる。

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