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2005年12月16日 (金)

労働組合の変質と労働争議の消滅、長期的な回顧1

 今回と次回のブログで、昭和30年代前後から数年間のことについて、ほとんどの人たちに見過ごされてきたことで、かつ筆者が気になることについて述べます。これには、私の想像や推察が多く含まれています。誰か興味のある方は裏づけの調査をしてください。
 昨日の新聞報道によると、全国の労働組合の推定組織率は今年6月時点で18.7%であるという。そして、1,000人以上の大企業ではそれが47.7%であるという。以上、厚生労働省の調査による。このように労働組合の組織率が低下している現状では、労働争議などは起こりえないであろう。以下の記述は、この組織率低下の端緒となる。
 昭和39年にわが国はIMF8条国に移行するとともに、OECDに加盟した。これが、昭和42年以降の資本自由化に結びつく。この前後に、民間労働組合が大きく変質した。端的にいうと、民間労働組合がポチ(ハチ公の方がより適切)になったのである。それには、経営者側からの大きな働きかけがあったものと思う。
 一般的にいうと経営陣は次のように考えた。資本自由化・貿易自由化に伴い、わが国の企業は諸外国の有力企業との競争に直面することになる。この競争に打ち勝つためには、労働争議で生産面にダメージを受けるわけにはいかない。ましてや、ロックアウトで生産を止めることは、企業イメージを損ね、納期の遵守が不可能となり、それだけ顧客を失う。そのためには、労働組合を「飼い犬」程度に変質させなければならない。手っ取り早くこれを行うには、労組の役員を会社から追放すればよい。
 私が在籍していた大手の電気会社の例を記しておく。この前後に、会社内に「第2人事部(何をするところか不明であった)」が新設され、そこの部長に警察官僚OBが着任した。おそらく、この人が以下の主役となったものと思われる。当時、私は労働組合の末端の役員であった。そして、私の組合の上司に当たる人(共産党員であったと聞いている)が、突然に会社をやめた。その人と私との関係は、主として組合関係の事項であったが常に連絡を取り合うという仲であった。その人が、私に一言もいわずに、伝言や手紙での連絡もなく辞職したのである。この辞職が不思議であつたが、まもなく私も自己都合でその会社を辞した。私の在社中には、労働争議は他社並みにあったし、ロックアウトも経験した。私の辞職後、この会社はほとんど労働争議もなくなり、さらに後年には、労働組合役員が取締役にも付いた。前記の警察官僚OBは常務取締役まで昇進した。
 私は、その会社を辞職した後に、民間企業を客観的にみられる立場の職に付いた。私の目には、上記の年次前後を境にして、民間企業の労働争議が激減していることが不思議ですらあった。例えば労働省『労働争議統計調査報告』によると、「作業所閉鎖」の参加人員は昭和41年以降に激減している。また「怠業」の参加人員は昭和38年以降に減少し、さらに42年以降には激減する。昭和40年以降の民間大手・中堅企業の労働争議は私鉄やバス・タクシー(これらの業種は国際競争とは無縁である)など以外はほとんどなくなっている。
 上記のように労働争議が激減している理由は、当然、労働組合の変質に求められる。この労働組合の変質の背景には、会社の経営陣からの大きな働きかけがあったとしか考えられない。私の例のように、会社の組合幹部(その多くは共産党員でオルグとも呼ばれていた)たちを、経営陣は何らかの手段で追放したものと思われる。これには、日経連が主導的役割を果たしたのでないかと推察している。この追放と、国会での共産党や社会党の衰退は軌を一にしているようである。
 ついでにいうと、近年OECDに加盟した韓国では、相変わらず民間大手企業で労働争議が多発しているようである。そのことが韓国企業に与える国際的な面でのダメージは大きい。韓国経営陣は、日本の例を学ばなかったのであろう。彼らは日本の経営陣のやり方に賛同できなかったのであろうか。あるいは、彼らは怠慢であったのだろうか。
 さらにいうと、国鉄民営化などがもたらした労働組合の変質がある。かつて成田闘争で逮捕される人たちのほとんどが、職業革命家とみられる学生たちを除くと、国労組合員、日教組組合員、自治労組合員であった。後者の3労組に揺さぶりをかけた黒幕(多分、あの人です)がいると思う。揺さぶりの手段は国鉄民営化であり、初任者研修などであり、公務員定員削減である。その結果、国労は壊滅し、日教組はタマになりさがり、自治労はかろうじて息をしている状態である。
 企業経営陣に対する対抗勢力として労働組合は大切な組織である。その労働組合がポチ・ハチ公程度では対抗勢力とはなりえない。年金・医療という大切な問題に対して、労組関係者の発する声はほとんど聞こえてこない。誰が個々の従業員・会社員の声をくみ上げ、それを会社経営や国政に反映できるのであろうか。労組関係者の奮起を期待します。

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