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2006年5月19日 (金)

貧民資本主義、あるいは小銭資本主義

 前回の賎民資本主義の続編です。先日、インターネットの株式画面で貧民(ひんみん)資本主義、あるいは小銭(こぜに)資本主義―英語でpenny-capitalismと表現する場合もある―とも呼べる「ケナゲナ営利活動」、「セコイ営利活動」を観察することができました。以下、その観察に基づく私の見方などを記しておきます。
 私が持っていた東証1部上場のある銘柄の取引である。その銘柄の1株当たりの価格は1200円前後であり、取引単位は100株であつた。その銘柄が3連騰を続けた日であった。その連騰に興味を持って、取引経過のインターネット画面をしばらく眺めていた。その結果は次の通りであった。(この株式の出来高は普段よりも大きくなっているが、それでも新日鉄や住友金属などに比べると取引単位でみた出来高は約10分の1程度とかなり少ない。)
  ◎ 株価はプラス・マイナス1円の変動が圧倒的に多く、同2円、同3円などもみら
   れた。
  ◎ 取引高は100株がもっとも多く、次いで200株で、これらが8割程度を占めてい
   た。
  ◎ 大体10秒に1回の割合で取引が成立していた。
 この結果から、この銘柄の典型的な売買は次のようになる。まず100株(12万円前後)を買う。そして、株価が1円上昇したところで、それを売る。それゆえに、もつともうまくいくと約20秒で100円の儲けとなる。(信用売買をすれば、売り・買いの順序で1円の下落で同様の儲けとなる。)
 この種の売買では、百戦百勝はできない。良くても13勝3敗程度である。たがら売り買いを合わせて32回やると、100円×10回=1000円の儲けとなる。多分、売りや買いを入れるために要する平均所要時間は1分程度だと思える。(買いから入った場合は、株価が1円上昇するまで売りを手控える。売りから入った場合は、同1円低下するまで買いを手控える。そして、次の売買の機会を待つ。) そうすると約30分で1000円の儲け、約1時間で2000円の儲けとなる。この時の東証の取引時間は4時間であったから、1日で約8000円の儲けとなる。売買金額を考えると、1日の定額手数料は3000円を超える。それゆえに、この場合の差し引き収益は5000円を下回る。このように100円の儲けを積み重ねて差し引き5000円の収益に至る過程は、私の株式売買の経験からいうと、3K(キガヌケナイ、キツイ、キケン)労働以上です。かつてのホリエモンや村上ファンドの儲けに比べると、あまりにもケナゲで、セコイと思いませんか。
 上記の小銭を稼ぐ活動も資本主義の範疇に含まれます。それゆえに、これらの営利活動を貧民資本主義、あるいは小銭資本主義と呼びます。昔、大阪のオバチャンたちがやっていた「タバコのばら売り(1箱を開け、その中の1本ずつを販売する)」や「鉄道などの回数券のばら売り(11枚つづりで売られている回数券を買い、それを1枚ずつ売る)」などを想起させます(ただし、これらの営利活動は大阪以外のオバチャンたちもやっていたようです)。上記の株式売買もどこかのオバチャンがやっているのであろうか。オバチャンがパソコンを操作しているのでしょうか。
 われわれの社会の健全性を維持していく上で、これらの貧民・小銭資本主義とも言える営利活動も、前回述べた貴民資本主義とともに、大切です。もちろん賎民資本主義も大切です。問題は、貧民、貴民、賎民の構成割合である。貧民が多すぎると、社会はせせこましく騒がしくなるであろう。賎民が多すぎると、社会はギスギスしたものとなる。貴民が多すぎると、社会には尊大な風潮がはびこるであろう。

追記:賎民について
 ライブドアがフジテレビの株式を大量に取得した後の時期に、多くのブログで賎民資本主義という言葉が氾濫していた。これらのほとんどは、大塚久雄氏のM.ウェーバー解釈に依存した言葉遣いのようであった。私の前回のブログは、この大塚解釈を拡張している。
 なおM.ウェーバーはその著『古代ユダヤ教』の中で、ユダヤ人をパーリア(賎民)と呼んでいる。(そこからの類推で、彼の『資本主義の精神』でもパーリア=ユダヤ人と理解されている。) 私は、学者としてのウェーバーの態度を批判したい。もっと価値中立的な用語を用いるべきだと思う(痴呆症を認知症と呼び変えたように)。ウェーバーの言葉使いと、ナチスによるユダヤ人虐殺が無関係であるのであろうか。識者の助言を待ちたい。

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