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2011年4月 4日 (月)

情報通信白書と知的怠慢

 総務省『情報通信白書』平成22年版やそれ以前のものを読んでいると幾つかの納得できない数値に出会う。そこで多用されている『情報通信産業連関表』(以下、情報IOと呼ぶ)の値がとくにおかしい。例えば2008年表のパーソナルコンピュータの国内生産額は1,000,782である。以下、金額の単位はすべて百万円で、生産者価格表からの値である。この経済産業省『工業統計表、品目編』の値(全数調査値)は1,266,372となる。企業のICT(情報通信技術)化の根幹を成すパソコンの数値でこのように大きな乖離が生じているのである。
 このような点を、さまざまな統計と産業連関表に詳しい友人に確認してみた。友人いわく。『情報通信白書の数字はデタラメに近い。「情報通信白書」ではなく「情報通信改ざん白書」と呼んだ方が適切である。』そして、情報IOのいかがわしい数値を具体的に教えてくれた。以下は、それを参考にしたコンピュータの正誤対応の一端である。「正」は総務省『平成17年(2005年) 産業連関表』平成21年3月からの値(以下、省庁共同IOと呼ぶ)であり、「誤」は情報IOの2005年表からの値である。省庁共同IOは5年毎に作成されており、これ以前の平成12年表も作成されている。情報IOはこの平成12年表などに準拠して作成されているという。(なお、友人が指摘したラジオ・テレビ受信機も正誤の開きが極めて大きいが、ここでは省略する。)
 ◎パーソナルコンピュータ
   輸出額・・・・正は507,889にたいして、誤は217,669
   輸入額・・・・正は1,062,458に対して、誤は740,864
     国内需要・・・正は1,851,213に対して、誤は1,715,487
     内、中間需要・正は68,341に対して、誤は117,977
 ◎電子計算機本体(パーソナルコンピュータを除く)
   輸出額・・・・正は158,121に対して、誤は34,868
   輸入額・・・・正は772,511に対して、誤は1,034,900
     国内需要・・・正は985,766に対して、誤は1,371,756
     内、中間需要・正は35,532に対して、誤は51,932
 上記の輸出と輸入の値は「正」は財務省『日本貿易月表』から得られており、「誤」も同表から得られているはずである。もちろん品目の定義も同じはずである。ついでにいうと、パソコンとその他の電算機の和となる2つの品目合計の輸出と輸入も「正」と「誤」では異なる。
 情報化社会で最も重要と思われるパソコンとその他のコンピュータの数字でこれだけ大きな差が生じているのである。どうして、こんなに大きな差に総務省・情報通信担当部局は気が付かないのであろうか。産業連関表の性質を考えると、情報IOに示されている各産業部門のコンピュータの投入額・投資額はシャチャカ・メッチャカになっているはずである。そして、シャチャカ・メッチャカを延長している情報IOの2006年表、2007年表、2008年表も当然ながらそれを引き継いでいる。だから、初めに述べたバソコンの国内生産額の違いも生まれているのである。もちろん、そのシャチャカな数字を用いた『情報通信白書』の分析もいい加減なものとならざるを得ない。
 情報IOは省庁共同IOよりも早期に推計されているということを斟酌する必要があるかもしれない。それでも、後者の報告書の発刊は平成21年3月である。この速報は平成20年8月に刊行されている。前述した『情報通信白書』平成22年版は平成22年7月の発刊となっているから、白書担当者は省庁共同IOの数字と自分たちのいい加減な情報IOを比較できたはずである。もし、この比較をしなかったとしたら、彼ら・彼女らは知的怠慢であったといわざるを得ない。友人いわく。『総務省・情報通信担当部局は自分たちの都合のよい数字を使いたいがために、省庁共同IOを無視したのではないか。不都合な真実を隠すために、自分たちでいい加減な情報IOを作成しているのではないか。』
 情報通信産業の盛衰やそれがもたらす変革は、今後のわが国の行方に大きな影響を及ぼす。例えばOECDやILOのホームペイジには多くのICT分析論文が掲載されている。この大事な情報通信産業の推計や分析を総務省・情報通信担当部局に任せておいてよいのだろうか。自分たちに都合のよいように数字を改ざんしている人たちには任せてはいけないはずである。
 現在、発行される白書の中では『情報通信白書』が一番多くの人たちの興味を引いているのではないか。そして、この白書の数字や分析を鵜呑みにしている人も多いはずである。国、あるいは総務省という権威を盾に、いい加減な数字や分析を撒き散らす『情報通信白書』の存在・発行を許しておいていいのだろうか。私は、総務省・情報通信担当部局に『情報通信白書』の廃刊や、過去の白書の「誤りの謝罪」を要求したい。

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コメント

本当ですか。なんとなく理解できます。私のパソコンの数字、直感的なものは「正」に近い。

投稿: 情報音痴 | 2011年4月 7日 (木) 10時47分

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