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2012年9月 3日 (月)

狼おじさんの夏、死者32万人の想定内

 南海トラフ地震・津波で死者数は最悪で32万人に上るという推計が8月29日内閣府の某会議から発表された。これは、幾段階にも及ぶ推計のそれぞれの段階で最悪の想定を選択した結果だという。つまり、最悪×最悪×最悪×最悪・・・の結果だという。ここで大事なことは、この死者数が生ずる確率はどのくらいになるかということである。この確率は示されていないようである。おそらく極めて小さい確率であろう。内閣府の報告書では「正しく恐れてほしい。発生頻度が極めて低いからと言って軽視することもなく…」とある。
 これに対して、朝日新聞の天声人語氏は「最悪を覚悟して、最善を尽くす。これが危機管理の基本である。」(9月1日)と述べている。多くの新聞の解説や識者の意見は天声人語氏と似ていた。
 これらに2つの点から異議を述べたい。まず内閣府や政府の思慮のなさである。今の日本は企業家、会社員、学生のほとんどが「縮み志向」に陥っている。このような状況下で、上記のような報告書を単独で国民の前に示すことが私には理解不能である。我が国の経済を活性化するためには、まずもってこの「縮み志向」を軽減・転換することが必要なことは誰でもわかることである。そのためには、すべての国民をencourage (勇気・元気・希望などを持たせる)することではないか。先の報告書は、これとは逆に企業家をはじめとするすべての国民をdiscourage (勇気・元気・希望などを失わせる)させ、「縮み志向」を強化しているだけである。少なくとも、この報告書と同時に国民をencourageする何かを発表しなければならなかったと思う。
 もう1つは先の確率である。極めて小さい確率なら、最悪の予想は幾つでもできる。例えば、「来年中に巨大隕石が日本列島を直撃し、国民の大半が死亡する」や「来年中にどこか国の間で核戦争が起こり、地球上に5発以上の原爆が爆発する」などである。これらの最悪を覚悟し、最善を尽くすためには我が国・国民は何ができるのだろうか。最悪×最悪・・・の結果だけを考えたら、国民は生きる勇気を失うはずである。この結果が起こる確率が具体的に示される必要がある。杞憂という言葉を忘れたのだろうか。
 3.11以降は、わが国には狼少年ならぬ「狼おじさん」が一杯輩出した。政府や関係機関の地震予想値の算出に当たっては、「より危険な数値がでること」が目的化されているようである。だから、巨大地震が起こる、巨大津波が来るという狼おじさんが多数現れ、それ相当の扱いを受けているように見える。
 狼おじさんの夏も終わりである。国民は発生確率を伴う巨大地震・津波の発生予測を正しく受け入れなければならない。発生確率を伴わない地震・津波の発生予測などは意味のないものと思わなければならない。さらに言えば、地震のメカニズムが不明だという。もっともらしい理論の基盤であるプレート理論も、そのプレートがどうしてある方向に動いているのかが分かっているのだろうか。そうならば、予測者は発生確率を算出した前提も詳細に国民の前に示さなければならない。もう。狼おじさんにさよならを言おう。

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