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2012年9月29日 (土)

家計牛肉需要に与えたO157とBSEのマイナス効果

 O157(腸管出血性大腸菌)とBSE(牛海綿状脳症)は我が国の家庭における牛肉需要を大きく縮減したようである。そこで、総務省『家計調査年報』から得られる1人当たりの年々の需要量(農林漁家世帯を除いた全世帯の値)を用いて推計した結果の概要を述べておこう。
 これらの縮減量の推計モデルはpiecewise linear regressionの方法に準拠している。分析においてはタイムトレンドを工夫したことにより、O157とBSE毎に同時に定数項とタイムトレンドの回帰係数を変化させることができた。推計方法も含めた詳細な結果については、要求があれば送信します。コメント欄にその旨を記し、アドレスも付記しておいてください。
 O157は1996年5月に岡山県で発生し、BSEは2001年9月に千葉県で確認され、更に2003年12月に米国で確認されている。ここではO157の効果は2001年まで表れているものと想定した(2002年以降はBSEの効果と分離することができなかった)。
 以下では、需要縮減量と同割合を示す。割合は、これらの効果がなかったと仮定したときの需要理論値に対する縮減量の値である。この割合はカッコ内に示す。単位は縮減量が1人当たりのグラム、割合が%である。
◎O157のマイナス効果
 発生年である1996年で301グラム(8.5)、1997年で206グラム(5.9)、1998年で179グラム(5.3)などとなり、2001年には165グラム(6.1)の縮減量となる。ただし、2001年の理論値はBSEも発生していないと仮定した値である。
 O157のマイナス効果は、おそらく2002年ごろに収束したと考えられる。
◎BSEのマイナス効果
 発生年である2001年の縮減量は431グラム(14.6)となるが、年次の後半に発生したことから考えるとこの量は多い。翌2002年では742グラム(24.0)と極めて大きな縮減量となる。また米国での発生確認・輸入差し止めの影響が出た2004年で550グラム(20.1)の縮減となっている。2006年以降は2011年まで250グラム前後の需要縮減で推移している。
 BSEのマイナス効果は分析の最終年である2011年でも観測されている。このマイナス効果は、今後も年間250グラム前後で継続していくであろう。

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2012年9月 3日 (月)

狼おじさんの夏、死者32万人の想定内

 南海トラフ地震・津波で死者数は最悪で32万人に上るという推計が8月29日内閣府の某会議から発表された。これは、幾段階にも及ぶ推計のそれぞれの段階で最悪の想定を選択した結果だという。つまり、最悪×最悪×最悪×最悪・・・の結果だという。ここで大事なことは、この死者数が生ずる確率はどのくらいになるかということである。この確率は示されていないようである。おそらく極めて小さい確率であろう。内閣府の報告書では「正しく恐れてほしい。発生頻度が極めて低いからと言って軽視することもなく…」とある。
 これに対して、朝日新聞の天声人語氏は「最悪を覚悟して、最善を尽くす。これが危機管理の基本である。」(9月1日)と述べている。多くの新聞の解説や識者の意見は天声人語氏と似ていた。
 これらに2つの点から異議を述べたい。まず内閣府や政府の思慮のなさである。今の日本は企業家、会社員、学生のほとんどが「縮み志向」に陥っている。このような状況下で、上記のような報告書を単独で国民の前に示すことが私には理解不能である。我が国の経済を活性化するためには、まずもってこの「縮み志向」を軽減・転換することが必要なことは誰でもわかることである。そのためには、すべての国民をencourage (勇気・元気・希望などを持たせる)することではないか。先の報告書は、これとは逆に企業家をはじめとするすべての国民をdiscourage (勇気・元気・希望などを失わせる)させ、「縮み志向」を強化しているだけである。少なくとも、この報告書と同時に国民をencourageする何かを発表しなければならなかったと思う。
 もう1つは先の確率である。極めて小さい確率なら、最悪の予想は幾つでもできる。例えば、「来年中に巨大隕石が日本列島を直撃し、国民の大半が死亡する」や「来年中にどこか国の間で核戦争が起こり、地球上に5発以上の原爆が爆発する」などである。これらの最悪を覚悟し、最善を尽くすためには我が国・国民は何ができるのだろうか。最悪×最悪・・・の結果だけを考えたら、国民は生きる勇気を失うはずである。この結果が起こる確率が具体的に示される必要がある。杞憂という言葉を忘れたのだろうか。
 3.11以降は、わが国には狼少年ならぬ「狼おじさん」が一杯輩出した。政府や関係機関の地震予想値の算出に当たっては、「より危険な数値がでること」が目的化されているようである。だから、巨大地震が起こる、巨大津波が来るという狼おじさんが多数現れ、それ相当の扱いを受けているように見える。
 狼おじさんの夏も終わりである。国民は発生確率を伴う巨大地震・津波の発生予測を正しく受け入れなければならない。発生確率を伴わない地震・津波の発生予測などは意味のないものと思わなければならない。さらに言えば、地震のメカニズムが不明だという。もっともらしい理論の基盤であるプレート理論も、そのプレートがどうしてある方向に動いているのかが分かっているのだろうか。そうならば、予測者は発生確率を算出した前提も詳細に国民の前に示さなければならない。もう。狼おじさんにさよならを言おう。

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