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2016年5月17日 (火)

外国専門誌への論文とウィルスメール

 外国の専門誌に論文が掲載されると、著者のメールアドレスが付記されるようになって久しい。このメールアドレスなどを用いてウィルスメールが多数送付されている実態を述べる。
 姓が田中や鈴木などで、名が「あきら、ただし、のぼる」などのように英語表記で同姓同名が多い人は危険度が低いと思われますので、以下は安心して読んでください。それ以外の人は警告文として読んでください。
① 一定の質以上の外国専門誌に論文を発表したことがある人で、そこにメールアドレスが付記されている場合、そして最近年程危ない。試みに英語表記の姓名にてネット上で検索してみてください。自分の論文がなかなか現れないようならやや安全です。私の場合、2年ほど以前に掲載されており、しかもネット上で簡単に私の論文に接続でき、メールアドレスも取得できる。ここでの要点は「英語表記の姓名からメールアドレスが簡単に取得できる」ことです。
② 最近、外国の銀行口座に送金(bank transfer)した人。この場合、国内手続きは大変煩雑の上、手数料が高いのに加えて、送金内容や送金者氏名が外部に抜き取られているケースが多いようです。それが国内銀行から、外国銀行から、あるいはその経路からかは不明です。私の場合は今年の2月中旬にメガバンクを利用しています。この送金書類にはメールアドレスは一切記載されていません。ここでの要点は「英語表記の姓名と取引内容が比較的簡単に外部に漏れる」ことです。
③ ネット上でキャシュカードを用いて外国と何らかの決済をした。これは①と②の要点を揃えていますので、以下を参照してください。

 私への危険度の高いウイルスメールは2月中旬以降、これまでに150通以上も受信しています。これらは、プロバイダとの契約により、ウィルスが削除された上にそのような付記があります。これ以外に、「ウィルスを完全に削除てきなかったので、プロバイダで削除しました」という表示を一瞬だけ画面に表示するプロバイダからのメールが多数来ている。多分、200通以上あると思います。
 ウィルスメールの内容の要点は「銀行口座の残高が不足していますので」、「相手先口座が不明瞭」、「決済後の口座残高など」です。このように、ウィルスメールの中に②に関連することが書かれています。(③の時には、キャシュカードに関連することが記載されていました)。
 上記のように、①だけの場合にはメールには「受信者に心当たりがある内容」を盛り込めない。このため、後述の名簿では①だけの情報は価値が低い。
 私の場合、前述のように2月中旬に②が発生し、それからジャカスカとウィルスメールを受信しました。②ではアドレスを記載していないので「おかしい」と思っていました。そんな時に2年ほど前のアメリカBLSでのデータ取得時のことを思い出しました。そこでは、割り込みでの利用者調査があり、私の論文が表れました。この論文は、前記よりもかなり以前のものでアドレスは記載されていません。それで、3月頃ネットで私の姓名で検索し、前述の論文を見つけました。この検索を丹念にやっていくと、アドレスのない論文にもいきつきました。
 私の推察では、名簿業者みたいな人がいて、まず②を得る。そして、①からアドレスを取得する。それらから、①と②を掲載した名簿を作り、それを他者に販売する。特定の個人がさまざまな名前を使い分けてウィルスメールを送信しているケースも多そうです。おなじ内容で送信者だけが異なるメールもかなりある。
 このウィルスの内容は当然ながら分かりません。最近急速に普及している例の極悪だと想像しています。外国の専門誌に論文を発表している人やこれからという人は注意してください。

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2016年5月16日 (月)

労働生産性の集計式

 前2回の「総労働生産性の向上策は簡単」(以下、前回と記す)の続きです。労働生産性の集計式(分解式)は、多くあるはずですが、専門誌などに掲載されているものはほんの少しです。前回の文献ではかなり多くの式が掲載されている。それらは大別すると次の3つになる。以下、産業別労働生産性の集計式を想定する。
① 産業別労働生産性の比(今期の値÷前記の値)のウエイト付加法和。
② 産業別労働生産性の比とその他の値のウエイト付積和。この式では、生産性の比の他に何かを含む値のウエイト付となる場合がほとんど。
③ 総労働生産性の対前期伸び率を分解した式。
 前回も述べたように、労働生産性を操作する場合はこの集計式に事後情報が含まれていないことが大切となる。しかし、ほとんどのそれらはこの事後情報が含まれている。つまり、操作をする前に、操作後の情報を用いることになる。ただ1つの例外が、前回紹介した論文に記されている。ただし、それは近似式である。近似式でなければ、それは操作に用いられないはずである。だから、近似の程度が論文のそれよりも優れているものが存在しているかもしれない。
 なお、OECDの集計式マニュアルは、近頃の文献では用いられていない場合が多いようである。そして、他の式を提示する論文執筆者はその理由を説明しない。この例外には、大御所のJorgenson先生もいる。先生の集計式はOECDのそれのファミリーに含まれるとみなされる。
 産業別労働生産性の集計式は総労働生産性の分解式でもある。分解の方が容易に思えるが、操作という視点から言えば、集計に力点を置く方がよかろう。ただし、席亭にはどうしたらよいのかはわからない。
 近いうちに、誰かが満足のいく生産性の集計式を見つけるかもしれない。それを何かで見つけることができれば、席亭は坊さんのマネで
    にようぜい・がーもん(この如く我聞けり)。チーン。

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2016年5月13日 (金)

総労働生産性の向上策は簡単、その2

 前回の続きです。前回と同様に、論文とは前記のものであり、労働生産性を単に生産性と呼びます。
◎ 生産性の集計式(つまり産業別の生産性から国の生産性を導くための式)は多数あります。代表的なものはOECDのマニュアルで示され、このように集計すべきであると述べられています。これらの集計式から得られる個々の産業毎の貢献度は、集計式毎に異なります。だから、貢献度とは何かという疑問が生まれます。論文では、この点にも言及しています。
◎ 著者のStrategic decomposition(以下、Stdeco)から得られる結果とより一般的な集計式から得られる結果を比較したテストも面白かった。総生産性(国全体の生産性)の増加を最大化させるためにどれか一つの産業を選びださなければならない問題の解答を前者と後者で比較するものである。Stdecoを用いると、簡単に回答が得られる。
◎ おそらく論文の最大の収穫はStdecoから得られる下記の総労働生産性向上策であろう。前回のアメとムチを使うと次のような簡単な回答が得られる。これを戦略と呼ぶ。
  ① ウエイト付アメ(ウエイト付産出シェア)-ムチ(就業者シェア)が正ならば、その産業の就業者を増加させよ。
  ② ウエイト付アメ(ウエイト付産出シェア)-ムチ(就業者シェア)が負ならば、その産業の就業者を減少させよ。
戦略はこの2つである。ここで用いるウエイトやシェアは事前情報である。
◎ 数学頭の席亭が最も興味を持った数式は付録で示されている「総生産性が個々の生産性のウエイト付積和で与えられている式」である。べき乗の計算の公式に反するような形になっているのが面白かった。

付記 最近になって、専門誌の検索が簡単だと分かりました。この論文も「IJCEAS」と入力して検索するとこのjournalが簡単に見つかります。そこをクリックして、そこで当該論文をクリックすればよい。無料で閲覧、ダウンロード(pdf)が可能です。
 蛇足ながら、専門誌は論文の閲覧すら有料のものが多い。国会図書館の電子ジャーナルでさえ、ここ数年の論文では閲覧できない専門誌が多い上、そもそもその電子ジャーナルに含まれていない専門誌もかなりある。比較的小さい某大学の電子ジャーナルは対象専門誌も多くかつ無料でダウンロード(複写)できます。国会図書館はこの点を解決してほしい(ついでに言えば、食堂の単価も高すぎる)。

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2016年5月12日 (木)

総労働生産性の向上策は簡単、その1

 最近ある論文(著者名略)Strategic Decomposition…, International Journal of Contemporary Economics and Administrative Sciences, Vol. 5, Issue 3-4, 2015を読んだ。これは無料で閲覧できる。一国の総労働生産性(以下、単に生産性)が比較的簡単に向上させることできると述べており、その方策も具体的な数値例を用いて述べている。私なりの解釈で面白いと感じた点を幾つか述べてみたい。なお、「生産性=産出額÷就業者数」とする。
◎ 経済白書や経済財政白書などで何度も目にした「(ア)低生産性の産業から高生産性の産業への就業者の移行が国の生産性を高める」、あるいは「(イ)サービス業(低生産性の代表)から他の産業への労働の移行が国の生産性を向上させる」などの記述が出鱈目であることもわかった。もちろん、これらの記述を読んだ当時はそうだろうと思っていた。前述の見方は、高名なエコノミストにもみられる。
◎ 学習理論との真逆の関係が面白かった。かなり以前に勉強した学習理論(マウスかラットを使用)で「学習効果はアメ÷ムチの比で決まる」と説明されていた。私は、それを鵜呑みにして、そのような論文を書いた。ところが上記論文の国の生産性向上策は「(ウ)アメ-ムチの差を重視する」ことになる。ただし、四則演算ができるように両者の単位を揃えなければならない。
 この場合のアメは個々の産業の産出額の割合(つまり個々の産出額の全国計に占めるシェア、%で示す、以下もこれに準ずる)で、ムチは個々の産業の就業者の割合である。簡単な計算によれば、アメ÷ムチの比は「個々の産業の生産性÷全国の生産性」となる。この比を重視すれば、上記の(ア)や(イ)が得られる。
 上記の(ウ)をなるほどと私が納得した理由は次の通り。簡単な例を挙げる。勝ち・負けが半々の無料のくじを想定する。
  A: 当たりなら10万円もらえ、ハズレなら100円支払う(アメ÷ムチは1000、アメ-ムチは約10万円)。
  B: 当たりなら1万円もらえ、ハズレなら1円支払う(アメ÷ムチは10000、アメ-ムチは約1万円)。
越後屋や私ならAを選ぶ。Bを選ぶ人はヘンな人。マウスやラットはBを選ぶのでは。くまモンはどうかな。

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