樹冠(じゅかん)経済化する日本
かなり以前のロイターのオンライン記事(ひょっとしたら別のそれ)上で「林冠経済」という言葉に遭遇した。その記事を読みだして直ぐに「樹冠経済」の方がより適切だと思った。
この林冠経済は英語のcanopy economyの訳語として使われていた。記事の中では、canopy economyは「アメリカで上位1%がその年に生み出される富の30%から40%程度を占めている状況」を指す言葉として使っていた(ただし富の占有率は?)。この状況を勘案して、訳者は林冠経済と訳したものと思われる。canopyは天蓋などの意味があり、記事の内容を考えずに訳すと天蓋経済となるのでは。それと対比してみると、ロイターの訳者は90点以上を与えられるはず。おしいな。画竜点睛です。樹冠経済なら100点以上です。
樹冠や林冠という言葉は林業にあるみたいですが、森林生態学みたいな学問でも樹冠という言葉があります。それはアジア熱帯モンスーン地帯のジャングルで見られる状況などをさす。ここでは、日光と雨に恵まれ、樹木や草花などが良く育つ。そして、長い年月が経過すると、巨木のみが密生した森のような状況になる。巨木の陰に隠れるような丈の小さい木や草花には日光の恵みが到達しなくなり生育不能となる。もちろん、巨木の寄生木などは生育できる。この森の生態系は、巨木や寄生木の上層部のみがにぎやかとなり、中層部や下層部は貧弱となります。「天頂部のみが華やかで宝冠のように見える」、この生態系を指す言葉として樹冠が使われていると私は想像しました。このような生態系と樹冠を結びつけたテレビ番組も見ました。
私は、林という言葉で「そんなに大きくない木がややまばらに生育している状態」をイメージします。そして直ぐ北原白秋の『落葉松』が頭に浮かびます。
からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。たびゆくはさびしかりけり。・・・
これらから、林はよろしくないと思うのでずが。
それはそうと樹冠経済化はアメリカだけの問題ではないはずです。我が国も含む先進国や中進国の中国などでも見られることです。そもそも貿易の完全自由化と福祉国家は両立しないはずです。今回の英国のEU離脱はその例です。我が国は貿易立国です。現状では、我が国の福祉政策、端的に言えば年金保険・医療保険・介護保険などは比較的早期に破たんするはずです。国境政策と福祉政策は切り分けて論じてはいけないはずです。EUも樹冠経済へ進化するか崩壊するか、どちらかになるはずです。
私の現実的解決策は、貿易50%程度自由化と福祉(若干切り詰めた福祉)国家化だと思います。貿易非自由化する産業・職種はハンディキャッバーや高齢者などの聖域とし、これらの人たちの働く場とする。たまに日中、パチンコホールをのぞくことあります。その都度、悲しくなります。
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コメント
たまにパチホールに行きます。そこは高齢者の世界のようです。資金的に余裕のある高齢者ばかりだとよいのですが。
投稿: 弱すぎるギャンブラー | 2016年7月10日 (日) 12時02分
コメントありがとうございます。福祉社会とは難しいですね。整骨院へ行った時も、高齢者の方が、昔風に言えばアンマを受けていた。手技のそれで30分くらい、電気のそれで60分くらいです。これも保険が適用できるのだろうが。
最近、整体院や整骨院が目立って増加しているが、それにも・・・。
投稿: 席亭 | 2016年7月10日 (日) 14時58分