2007年9月17日 (月)

秋冬物商戦、革ジャケットは流行するか

 首都圏でも、秋冬物の商戦が始まった。9月8日の日経新聞によると、首都圏では革ジャケットや革ブルゾンが婦人物、紳士物ともに好調な出足であるという。そして、これらが今後ヒットする可能性があると述べている。はたしでそうであろうか。
 以前の当ブログで述べたが、秋冬物の売れ筋や流行はまず札幌で観察されるケースがほとんどである。だから日経の記事のように、東京やその周辺の店舗の8月下旬から9月初めの売れ行きからその秋以降の売れ筋や流行を占うのは早急である。
 ここで次の2つのことを考慮しなければならない。①秋冬物の売れ行きは札幌の方が首都圏よりも1ヶ月以上も先行する。②札幌は東京の飛び地であるから、札幌と東京の売れ筋や流行には差異がないはすである。これらから、9月上旬、あるいは中旬で首都圏の秋冬物の売れ行きを占うためには、札幌での秋冬物売れ行きの情報を参照することが不可欠なのである。
 もうひとつ考慮すべきことは革製衣服が循環消費の典型的な商品であるということである。これも以前の当ブログで述べたが、革製衣服は8年毎に販売のピークがある。このピークはきわめて大きいものと小さなものがある。私の知っている大きなピークは1989年か1990年である。それから計算すると、革製衣服のピークは2005年か2006年にあったはずである(これらのピークが大きなものか小さなものかは不明である)。つまり、今年ごろから革製衣服は下降傾向を示すはずである。だから、今年の革ジャケットや革ブルゾンの売れ行きは昨年ほどにはならないであろう。
 なお、流行は地域間でハコウ性を示すことがある。つまり、首都圏などで先行する流行が遅れて地方に波及することもある。革製衣服でも、そのような性質を持つ。それから考えると、地方での今年の革ジャケットや革ブルゾンの売れ行きが増加することもありえる。
 上記のように、秋冬物販売では札幌が首都圏に1ヶ月以上も先行するということがマーケティングの世界では無視されているようである。札幌の売れ筋や流行を観察・推察してから、それらを首都圏に投入すべきなのである。マンションメーカーがほとんどである婦人物では1ヶ月のリードタイムがあればそれらの生産は可能であろう。そうすれば、売れ残りも少なく、常に勝ち組になるであろう。

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2007年9月 8日 (土)

ミーハーグルメを見逃すな

 これからの飲食店はいかにしてミーハーグルメを呼び込み、顧客化するかということが大事な戦略となる。
 テレビや雑誌などに取り上げられた飲食店は、その提供するものがA級グルメかB級グルメか、はたまたC級グルメかにかかわりなく、比較的多くのお客が押しかける。つまり、ミーハー的なお客が多いということである。このお客をミーハーグルメと呼ぶことにする。比較的客単価の低い飲食店では、回転率が重要であるから、このミーハーグルメをいかにして呼び込むか、そして顧客化するかということが重要な戦略となる。この戦略は以下の点から構築すべきであろう。優先順位は以下の番号どおりである。
 ① 特徴を出す。おいしさよりも他店にないもの、珍しいものを提供する。例えばヤキトリ店では、若い女性だけの店員を配置する。あるいはタクアンならば、通常のそれに梅味、コブ味、アズキ味などのものを提供する。トンカツならば、ころもになにか追加するなり工夫をこらす。これによって、マスコミなどへの話題づくりとなる。
 ② さらに、ひと手間かける。例えばサンマの塩焼きでは、骨まで食べられるようにする(圧力鍋で焼けばよい)。ヤキトリならば、塩焼きの時にスダチなどをひと掛けする。
 ③ さらにもう一品、もう一切れを追加する。これらは、もちろん無料である。それで、安いわりに、ゴージャス感を持たせる。例えば宇治金時ミルク氷ならば、そこにメロンやマンゴーの一切れを追加する。コーヒーならば、小さな最中や大福を添える。あるいは、季節のものや旬のものの料理を少しだけ追加的に加える。例えばヤキトリでは、たらの芽のテンプラの一切れを追加して出す。
 ④ おいしさを追求する。おいしさの評価は相対的な面もあるので、戦略の順位は下位の方にくる。もちろん、マズイものは論外である。

 以上がミーハーグルメを呼び込み、顧客化するための戦略の柱となろう。さらに、これらに幾つかを追加すれば万全に近いものとなろう。なお、この点ではラーメン店が先行しており、これらのやり方が大いに参考となろう。

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2006年11月12日 (日)

ローソンの経営戦略

 ローソンの経営戦略が分からない。もっとも経営戦略があると前提にしてだが。社長をはじめとして経営陣は、ダボハゼのように、なんにでも飛びついている。だから、ローソンがマスコミに登場する頻度は高い。以下では、コンビニエンス・ストアでもっとも大切な出店戦略に限定して述べてみたい。
 ローソンの店舗数は全国で8455店舗、うち「ナチュラルローソン(以下、ナチュラル店と呼ぶ)67店舗、生鮮コンビニの「ローソンストア100(以下、生鮮コンビニと呼ぶ)」が61店舗である。以上は今年の8月末の数字である。
 まずローソンの店舗網について。その特徴は、セブン・イレブンに比べると、全国に展開しているという点にある。この全国展開網を最大限に生かすことが大切である。例えばインターネットの通販の物品のやり取りの場として、あるいは、その代金の清算の場として活用することである。この面では、経営陣の戦略は不十分である。多分、経営陣は全国展開網の利点に気づいていないのであろう。この利点が生かされているのは「郵政公社との提携」だけである。これとて、現状では利益に結びついていないと思える。
 次に、標準型ローソン店舗以外について。コンビニの経営効率を考えれば、セブン・イレブンのように、比較的狭い地域に集中して大量に出店しなければならない。ナチュラル店や生鮮コンビニは、その数から考えても、幾つかの地域にパラパラと出店しているとしか考えられない。これらの店舗形態のビジネスモデルは既に完成しているはずである。どのような商品形態で、どのような店舗運営で、どのような物流施設でなどのような決定、つまりビジネスモデルが未だ完成していないとは考えられない。もし完成していないとしたら、あまりに時間をかけすぎているといえる。これらの新規店の立ち上げから既に2年から3年経過している。現在の店舗数から考えて、ナチュラル店や生鮮コンビニは利益を生んでいないはずである。これらの店舗数を早急に拡大しなければならない。
 それなのに、「シニアにやさしい店舗(高齢者向けの店舗)」や「駅ナカ店舗(東京急行電鉄と共同開発している店舗)」の開発に手を出している。これらの店舗は比較的狭い地域に集中的に大量に出店できないはずである。前者は過疎地が対象となり、後者の駅の中となるからである。現状では、前者は採算がとれるという見通しは立たないであろう。後者はこれからの努力次第である。それにしても、これらの店舗数の確保はどうするのであろうか。
 さらに、経営陣は標準型ローソン店舗とナチュラル店や生鮮コンビニなどとの融合した店舗の展開などといいだしている。この融合した店舗には、それなりの商品構成を支える物流施設が必要となる。
 ローソンの出店戦略をみていると、経営陣は「その店舗を支える物流、例えば生鮮コンビニ支える物流」の効率化という視点に欠けているようである。生鮮食品は季節によって入荷量や価格が大きく変動する。それらを常に100円(税込みなら105円)で販売するためには、それなりの物流・加工施設が必要なのである。それを効率的に運営するためには、それに見合った店舗数が必要となるのである。

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2006年10月21日 (土)

耐久財と付加音

 二輪車のハーレーのエンジン音は独特で、心地よい響きがする。この例のように、耐久財では「音」が大事である。現在の耐久財(ここでは耐久消費財)では、音に対して十分な配慮がなされていない。
 現在の耐久財に対するメーカーの音に対する取り組みは「音を消す、つまり消音」、あるいは「音を小さくする、あるいは静音」だけである。これらはエアコンや電気洗濯機などで実行されている。
 ここでは、上記の消音や静音に加えて、機器に音を積極的に付加することを提案する。これによって、機器から排出される音を気にならなくすることができる。つまり消音と同じ効果やそれ以上の効果をもたらすことができるのである。前記のエアコンや電気洗濯機などに音を付加することを考えてみよう。
 睡眠時のエアコンから、「森の風のそよぎ」や「せせらぎの音」などが聞こえてくるのである。私の好みならば、「蒸気船の音・・・・ポンポンポン」である。そして、明け方にはエアコンから「小鳥のささやき」が聞こえてくるのである。そうすれば、エアコンの音が気にならなくなるはずである。
 洗濯機では、低音で奏でるクラッシック音楽がよいのではないだろうか。これらの音楽は複数備えられており、季節や時間、あるいは気候によって個人が選択できるようにしておく。もちろん、洗濯終了時には音がやや大きくなる。
 また、二輪車のように運転者が外気にさらされている場合でも音は重要であろう。ハーレーはエンジン音であるが、それ以外もありえる。二輪車ならば、エンジン音をできるだけ小さくし、和太鼓などの打楽器をメインにした音を付加するのである。そして、エンジン音より付加音の方が大きくなるようにしておく。もちろん、走行速度によって音を選べるようにしておく。例えば、交通量の少ない道路を巡航速度で走行している時、「お祭りマンボ」の音が聞こえてくるのである。これによって、二輪車の運転時の快適性は一層向上するであろう。
 上記の付加音は比較的小さな音に留まる場合が多いであろう。できるならば、音量は消費者が選べるようにしておく。
 付加音のためのコストはそれほど高くはないであろう。現在では、音声用LSIの価格はかなり低い。多分、消音や静音の方が高いコストとなるはずである。

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2006年9月 3日 (日)

とこ秋の国、鎌倉

 勝手に「鎌倉市の観光」売り出し計画を考えてみた。私のイメージでいえば、「鎌倉は年中秋の国」である。つまり「とこ秋の国」である。そこで、キャッチ・フレーズは
    『鎌倉はとこしえに秋に似たり』
とする。「とこしえ」は「長しえ」、「常しえ」でもよい。これは、李白からの借用である。
 李白の「秋浦(しゅうほ)の歌」は、次のような書き出しである。秋浦は地名で、山水の景勝地である。
   秋浦は長(とこ)しえに秋に似たり
   蕭條(しょうじょう)として人を愁(うれい)しむ
   客愁(きゃくしゅう)すくうべからず
   ・・・・・
 私には、この表現が鎌倉にピッタリのように感じる。私は、仕事上のアイデァに行き詰ると、一冊の李白を携えて鎌倉へ出かけることが多い。もちろん、出かけるのはウィークディに限定しているが。そんな機会に、建長寺の裏庭で上記の詩に出会った。この時の感動、ゾクゾクッと来た感動は忘れることができない。
 宣伝パンフには、上記のキャッチ・フレーズに添えて、鶴岡八幡宮や建長寺の秋の写真が添えられている。ついでに、おいしいそうな食べ物の写真が添えられていればなおよい。(なお、このパンフは夏には使えないようである。それで、秋、冬、春の限定となろう。)
 鎌倉観光は大別すると北鎌倉駅・鎌倉駅周辺、江ノ島周辺、江ノ電沿線、その他に分けられる。以下は、北鎌倉駅・鎌倉駅周辺に限定して述べる。上記の『とこ秋の国』のイメージも、この地域がもっともぴったりする。
 この地域の場合、北鎌倉駅周辺から鎌倉駅周辺、さらに八幡宮へと続く遊歩回廊にやや問題があるようである。これらの区域内での観光客の回遊性の向上策が必要である。もっと遊歩道を整備すること、無料で休憩できるポケットパークの設置、推奨回遊路の指定(歩行者の体力や歩行時間などから、3つくらい指定する)、遊歩道沿いの小川・池の整備なども検討すべきである。それに、おいしい食べ物屋も必須である。海のそばにありながら、地元のうまい海産物を食べさせる店が案外に少ない。李白を借用するのであるから、李白へ敬意を払って、おいしい酒飲み処も必須である。
 おいしい魚の干物、それに地酒、「とこしえに秋」の景観、この3つがそろえば私は満足である。景観をサカナにして酒が飲めるという施設・場所が必要となる。以上はオジサマ用である。オバサマ用、ギャル用には、スウィーツ(甘いもの、お菓子類など)が必要である。

追記:上記のキャッチ・フレーズは李白の借用ですので、無料で誰でも利用できます。

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2006年7月30日 (日)

コンビニエンス・ストアの明日

 コンビニエンス・ストアの不振が続いている。ほとんどの既存店の月別販売額は対前年同月比でマイナスが続いている(前月、6月はタバコの税金引き上げに伴う駆け込み需要のため、プラスとなっている)。この不振の大きな理由は2つ考えられる。1つは、店舗数の増大である。大都市圏では、コンビニは飽和状態にあり、これらの店舗間で食いあいが始まっている状態である。もう1つは、スーパーなどの深夜営業の開始である。これにより、コンビニのほぼ独占状態にあった深夜帯の販売額が減少している。
 この不振からの脱却策はあるのであろうか。やはり2つ考えられる。
 1つの策は、ローソンが始めているような、店舗形態の改革である。ローソンは、既存店の他に、主として女性客狙いの「ナチュラル・ローソン」と、生鮮食品100円ショップの「ローソンストア100」のビジネスモデルを開発した。そして、これらの3形態の店舗の他に、3形態の内の2つないし3つを融合した店舗を展開するという。これに加えて、高齢者に優しい形態の店舗の開発も進めている(これはセブン・イレブンやその他のコンビニも始めている)。これは、既存店の飽和に対する対策として有効であろう。つまり新しい市場が開拓できる。
 もう1つの策は、コンビニエンス・ストア独自の流行商品の開発・創造である。季節毎に、100円から300円程度の菓子類、アイスキャンデイ類、サンドイッチなどから流行商品を開発・創造するのである。例えば現在の夏物では、睡眠不足対策や覚醒作用を持つ食品を開発・創造するのである。「コーヒー入りのチョコ(冷凍されたチョコの中に液体のコーヒーが入っている)」、「ハッカ入りアイスキャンデイ」、「眠気覚ましハッカクリーム(眼の周りに塗ると、眠気が取れる)」、「10分位の間、冷気が出てくる缶詰」などである。もちろん、これらに流行の要件を満たすような工夫もしなければならない(この点については、昨年の8月12日の当ブログも参照)。
 この策で大切なことは、季節毎の流行を追及するということの他に、来店者に「こんな商品がある」、「この商品は何だろう」などという驚きや楽しさを提供することである。ある面で100円ショップの店内を見て回る時に味わう驚きや楽しさに類似している。現在のコンビニには、店内をみて回る時の楽しさや驚きがない。だから、時間つぶしにコンビニ店内を歩くという人はほとんどいない。これへの対策でもあり、来店客数増加につながるであろう。そして、客単価の向上にもつながるかもしれない。
 コンビニは現状のビジネスモデルのまま拡大することが難しい時期に来ている。早晩、何らかの対策が必要となる。その鍵は、いかにして①新市場の開拓、②来店客の増加、③客単価の向上を図るかということである。これらに対して、上記の2つは有効だと思う。

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2006年2月 3日 (金)

地域別消費の跛行性

 地域別の消費、あるいは都道府県別の消費には跛行性(はこうせい)がある。つまり、特定商品の消費には地域(以下、「地域」は地域、あるいは都道府県という意味で用いる)間で先後関係があり、特定の地域で先に消費され、それ以外の地域では後に消費されるということがある。この跛行性を流行や、メーカーの設定する地域別販売目標などとの関係で考えてみたい。なお、流行については過去のブログ(1月13日など)も参照してください。
 まず流行との関係から。
 ある流行は、一般的には大都市地域から始まる。そして、それが近隣地域や、その他の地域に伝播していく。例えば2005年秋の婦人服で、ある流行が8月下旬ごろから東京で始まったとしよう。(以前のブログで述べているように、東京の秋物の流行は札幌の方が先に始まる場合が多い。この点は無視する。) この流行は9月頃から、愛知や関東近県に伝播していく。ところが2005年中に、この流行がすべての地域に伝播しないことがある。東京から離れた地域では、この流行が2006年秋に現れることもある。
 流行には、このような跛行性をもって現れるケースも多々ある。このため、2005年中に完売できそうにない秋物流行婦人服を、2005年中にバーゲンなどでタタキウリする必要がないこともある。この点を確かめないで、タタキウリすると大損する。
 次にメーカーなどが設定する地域別の販売目標との関係を述べる。
 ある耐久財(例えばプラズマテレビ)のメーカーの例を取り上げる。このメーカーは2006年度上期の販売台数目標を立て、それを地域別の営業所や販売会社(当該メーカーが資本参加している代理店)などに振り分ける。不思議なことに、ほとんどのメーカーは次のような地域別割当をする。全国の上期の販売台数目標が2005年度下期、あるいは同上期のA倍ならば,すべての営業所・販売会社などの販売台数目標も同じようにA倍とする。そして、この目標を基準としてリベート(目標達成報奨金)を設定する場合もある。リベートは次のようになる。
   販売台数目標100%達成・・・ 仕入れ代金のX%
   販売台数目標110%達成・・・ 仕入れ代金のY%
   販売台数目標120%達成・・・ 仕入れ代金のZ%
   ・・・・・など
もちろんX<Y<Zである。
 先進的な商品の消費では、地域間に跛行性がみられるということを上記例は考慮していない。このことにから生まれるマイナスには次のようなものがある。
 営業所・販売会社などの間に、目標台数達成がきわめて容易なところや極めて困難なところなどが生まれる。例えばたいした努力をしなくとも、対前期比でA倍の販売を達成するところも出てくる。その一方で、どんなに努力してもA倍の販売を達成できないところも出てくる。
 またリベートの使い方が不適切なことは容易に分かろう。同じ総額のリベートを用いても、地域別の販売台数目標を地域間の跛行性を考慮して決定する場合と、考慮しないで決定する場合とでは、全国の販売台数は大きく異なるであろう。
 それでは地域間の跛行性はどのようにすれば分かるのであろうか。この跛行性は同じパターンで表われることは少ないから、その都度の消費者や販売店などの調査しかない。ただし流行は時間的制約があり、かなり難しい場合もある。全国展開する婦人服ブティックなどは、この面では有利であろう。先進的な商品の場合、費用さえあれば、地域別需要動向を知ることはそんなに困難ではない。それでも費用対効果を考えると、調査はプラズマテレビなどの大型商品(高価格商品)に限られるかもしれない。

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2006年1月13日 (金)

流行と循環変動消費

 これまでに述べた流行予測(8月12日と11月20日)の続きです。ここでは、流行と関連が強い循環変動消費について述べます。この循環変動を上手に利用すれば流行を呼び起こすことも可能となります。循環変動による需要のピーク(山)と流行は区別すべきことです。循環変動のピークは、過去のそれと同程度の需要にとどまる場合です。ただし、その需要に含まれているトレンドを考慮しなければならない。流行とは、過去のピークよりもはるかに大きな需要を喚起する場合です。
 比較的良く知られている循環変動はシリコン・サイクルです。これは半導体の需要変動波のことで、概ね4年毎にピーク(山)とボトム(谷)を繰り返します。この循環変動には上昇トレンドが含まれていたので、ピークもボトムも前回のそれよりも大きな値となっています。しかし、現在では、このシリコン・サイクルは崩れているようです。
 半耐久財の衣類(コート類)や皮革製品、耐久財の家電製品や自動車などの消費・需要では循環変動を示す商品が少なくないようです。この循環変動は、後者の耐久財では、買い替えサイクルとも呼ばれています。私の観察では、この循環変動は概ね8年サイクルです。
 少し本論から離れますが、極めて長期の観測結果から導かれた8年サイクルの例を示しておきます。戦前の図書になりますが、H. ムーアは100年程度のデータを用いて穀物の価格が8年程度の循環変動を示すことを計測しております(H. Moore; Generating Economic Cycles, 1923)。彼は、この理由を天体の動向に求めています。古い本ですが、私はこれを大変興味深く読みました。これには、1967年のreprint版もあります。
 ある商品が8年の循環変動を起こしているということが分かれば、この循環のピークと予測される年に投入する新商品に何らかの革新的な工夫を施せば流行を呼び起こすことができるかもしれません。婦人靴のブーツの例で述べます。この需要が8年サイクルを描いており、今秋がそのピークであると予測されているものとします。この場合、これまでの商品、あるいはその延長上にある新商品を市場に投入しても流行とはなりにくいでしょう。そこで、何らかの革新的な変革を伴う新商品を製造するのです。例えば、上半分の皮革部分に網目を入れる、あるいはチャックに変えて目立つ留め金をつけるなどです。さらには水虫防止機能を付加するのです。このような変革が消費者に受け入れられれば、その新商品は流行を呼び起こし、爆発的に売れるかもしれません。
 私の観察によると、革新的な新商品を市場に投入しなくとも、循環変動のピークと合致しただけで爆発的な流行が生まれる場合もあります。これには、消費者の嗜好の変化やその他の事情が影響しているものと思います。この場合でも、何らかの革新・変革を付与した商品を投入し、それが市場に受け入れられた企業は大きな利益を享受できます。
 半耐久財や耐久財を製造する企業には、それらの需要が循環変動を示すことを知っている人はかなり多いはずです。その割には、自分たちの扱う個々の商品の需要動向を分析して、○○は6年サイクル、△△は8年サイクルなどと把握している企業や担当者は極めて少ないようです。これらの循環変動のボトム(谷)に、新商品を市場に投入しても報われることが少ないということを企業・担当者は知っておくべきです。
 東芝が今年の夏ごろHD DVDの新商品を発売すると表明しています。ブルーレイとの競争上、なるべく早くこの商品を発売したいとの意向のようです。しかしDVDの需要サイクルを考慮しているとは思えません。私は、この東芝の戦略は失敗すると思います。そんなに大きな需要は期待できないと思います。ゲーム機の新製品戦略を想起してみてください。新技術を搭載した商品を製造できるということと、それを新商品として販売することを分けて考えなければなりません。HD DVDを単独商品としてではなく、テレビやパソコン、あるいはゲーム機の付属品として発売する戦略をとるべきだと思います。(もっとも、東芝の戦略がブルーレイよりも先に単独商品として販売することを重視し、販売台数はどうでもよいというのであれば別の話ですが。)

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2005年11月20日 (日)

流行予測とPOSデータ

 2005年秋冬物の流行予測は終了したであろう。そろそろ予測の判定結果も出てくるであろう。もしファション商品の秋冬物の流行を予測した人たちがいるとしたら、それらの人たちのほとんどが予測に失敗したであろう。それほど流行の予測は難しいのである。
 現在では、ほとんどすべてのスーパー、百貨店、ブティックなどの店頭にPOS (販売時点情報管理システム) 端末が設置されている。このPOSから得られるデータ(以下、POSデータ)を利用した場合に、どのくらい早く流行の予測ができるかを考えてみたい。
 結論から先にいうと、これらの情報が集まる結節点にいる人の資質が高ければいち早く流行を予測できることもあるが、通常は流行予測にはPOSデータは役に立たないといえよう。
 以前の当ブログ(8月12日)に記載したように、ファッション商品では何が流行の基軸になるか事前には分からないのである。そして、この基軸がPOSデータとして反映されていない場合、つまり入力要素となっていない場合がほとんどなのである。簡単な例をあげよう。
 今年の秋冬物の婦人服では「色が基軸で、青から紫に徐々に変わっていくグラデーションであって、それが背中側にある」服が流行したものとする。この流行情報はPOSデータにはどのように反映されているであろうか。多分、婦人服のPOSデータでは次のような情報しかとれない。
    ◎ 青や紫の服が売れている。
    ◎ グラデーションの服が売れている。
    ◎ ○○メーカーや××ブランドの服が売れている。
 来年には、このような流行情報も取り込めるようにデータ入力要素を変えたとしよう。ところが、来年の流行の基軸は変化しているはずである。それは形・スタイルであるかもしれない。例えば、全体のシルエットがA型やH型であるかもしれない。あるいは、流行の基軸は動物で、一昔前に紳士物ポロシャツの流行のようにペンギンやワニなどの動物がワンポイントでポケットについていることかもしれない。
 上記の例から分かるように、流行の基軸がさまざまに変化していく状況の中で、それらを忠実に把握するためにはPOSデータの入力要素は無限になってしまうのである。ところが現実のPOSデータの入力要素は比較的少数に限定されざるを得ないのである。このためPOSデータの集計から、流行の予測は不可能であるし、進行中の流行の把握でさえ不可能であるといえる。
 それでも例外がある。
 比較的大きな婦人服メーカーで、さまざまの店舗で販売している自社製品のPOSデータが集まるところ(情報の結節点)にいる人(Aさんと呼ぶ)を考えてみよう。このAさんが、これらの情報を常によくみていて、比較的良く売れている商品を頭に描いて、それらの共通点を探る習慣を持っているとする。この時、流行に自社製の服も絡んでいる場合は、Aさんは比較的早期に流行を把握できることになる。私は、これが現実の流行予測での最善時期・手段・方法だと思います。ここで大事なことは、「Aさんは品番をみて商品の全体像が頭に浮かぶ」ということである。
 このことから、さまざまな店舗のPOSデータの結節点にいる人(Bさんと呼ぶ)がさまざまなメーカーやブランドの品番をみて、それらの商品の全体像が頭に浮かぶのであれば、流行を比較的早期に、それもAさんよりも早期に把握できることになる。現実には、Bさんのような人は極めて例外的存在といえよう。このことから、先述の結論が得られる。
 私は、以前のブログで、首都圏の秋冬物の流行は「もみじ前線が東京より1ヶ月以上早く到来する札幌」の観察から可能であると記載した。また首都圏の春夏物の予測は、「桜前線が東京より1ヶ月程度先行し、かつ東京の飛び地的な地域・都市」を観察すればよいが、その地域・都市は不明であるとも記載した。
 流行の予測は、首都圏に限定すれば、後者の地域・都市さえ発見できればよいのである。多くの地域や都市を丹念に歩いて観察すれば、後者は発見できるかもしれない。(興味のある方に対するヒント:まず、かつて支店経済で栄えた都市から観察してみてください。)
       ―ー―ーーー―ー―ーーー―ー―ーーー―ー―ーーー―ー
 流行と関連し、かつ流行と混同しがちな事象として「循環的な消費・購買」がある。皮革製品、それも革製ハンドバッグ、婦人靴、革製衣服などに典型的にみられ、これらは6年から8年の循環的変動を示す。つまり6年から8年ごとに販売のピークがある。
 この循環的な変動と流行が重なることがある。10年ほど前の皮革製衣服類の販売がそうであった。この時は、流行の基軸が「素材としての革」であり、革製衣服の循環のピークでもあった。この年には、皮革製のジャンパー、スカート、ベストなどが大いに売れた。
 私の予感では、このように循環的な変動と流行が重なることがまた起こりうると思う。その時は、多分、流行の基軸は「素材としての革、それもヌバック(バックスキンのように起毛した革)」となり、ヌバックの婦人靴(ブーツ、これは少し前に流行した)、ハンドバック、カバン、ベストなどが街に氾濫するのではないか。その時期は、もちろん私には分からない。

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2005年8月12日 (金)

流行の予測

 もうすぐ今年の秋冬物のシーズンが始まる。ファッション商品の流行の予測について考えてみたい。
 流行は色、形、素材、デザインなどさまざまな要素の一部が基軸となって表われる。そして色であっても、単色、2色、3色以上の組み合わせ、グラデーションなどさまざまなものが基軸となる。もちろん、形や素材でもさまざまなものが基軸となる。例えば婦人物ハンドバッグでは、素材として牛革、その他の革(爬虫類などの革)あるいは合成繊維、素材の色、全体的な形(角ばっているか丸っこいかなど)、もち手の素材(金属や竹など)、デザインなどのどれかの要素が流行の基軸となる。
 流行には、上記のほかにも国民の感情的な要素なども影響する。
 バルセロナオリンピックがあった前年(あるいは前々年)、国際流行色協会(正確な名称ではない?日本から資生堂と東レが加盟している)が次の年の流行色は「バルセロナオレンジ」と決定した。この背景には、西欧、特に北欧の人たちのオレンジに寄せる特別の思いがあったものと思う。私の推測では、北欧などの人たちは太陽への憧れがひときわ強いはずである。特に太陽の輝きの少なくなる冬は、彼らは太陽への渇望のような思いが強くなるであろう。この太陽への渇望感の中でオレンジに出会うとどうなるであろうか。オレンジは北側の西欧の人たちにとっては「太陽の化身」のような存在ではないかと思う。似たようなことを、ゲーテがどこかで述べていたと思う。なお、このような思いはレイ・ブラッドベリ『たんぽぽのお酒』晶文社を読むと理解できるであろう。彼の場合は、夏あるいは太陽の象徴が「たんぽぽ」である。
 私は、上記のオレンジ色は日本でははやらないであろうと確信していた。東京に暮らしている私は、現在の真夏の暑さに辟易している。たぶん多くの日本人が真夏の暑さに苦労しているがゆえに、太陽を連想させるオレンジ、あるいはオレンジ色を好む人は少ないはずである。そして、実際に、オレンジは日本の流行色とはならなかった。(読売ジァイアンツのチームカラーはオレンジである。どうしてオレンジを選択したのであろうか。高校野球⇒夏⇒太陽⇒オレンジなのかな?)
 このように、流行の背景には国民的な感情のようなものも関わる。
 私の経験や観察によると、一部の例外を除けば、基本的には流行は予測できない。例外的に流行が予測できる場合がある。秋冬物の首都圏における流行の予測が比較的簡単にできる時がある。例えば、私が婦人服のマーケティング担当者であるとする。私は、今年の秋冬物の中から首都圏で流行するかもしれないと思われる多数の商品を札幌の百貨店・ブティックなど幾つかの店舗に並べて消費者の反応を注意深く観察する。その結果から、それらの商品の首都圏での販売状況の予測が可能となる。この予測の精度はかなり高いものと思われる。そして、爆発的に売れそうな商品、つまり流行しそうな商品が見通せる時もある。
 札幌と東京では、もみじ前線(秋の訪れ)で1ヶ月程度のラグがある。もちろん札幌の秋が先である。そして市民意識の上では、札幌は東京の飛び地のような存在である。これらのことから、上記のように首都圏の秋冬物の販売状況は札幌を観察することによってある程度予測できるのである。この時のリードタイムとしては1ヶ月程度である。婦人服などではマンションメーカーと呼ばれている中小業者が多く、これらの業者には1ヶ月のリードタイムは十分であろう。つまり1ヶ月の間に流行しそうな商品を作り上げるのである。
 それでは、首都圏の春夏物の予測はどのようになるのであろうか。桜前線(春の訪れ)が東京よりも1ヶ月程度先行し、かつ東京の飛び地的なところを上記のように観察すればよい。ただし、私はこのような地域・都市はどこだか分からない。多分、現時点では存在しないのではないかと思う。

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